富山の刑務所に指導技官として勤務している倉島(高倉健)は妻・洋子(田中裕子)を病気で亡くす。妻の遺言には、骨は故郷である九州の海にまいてほしいと記されていた。倉島は車で九州の港町へ向かう。監督は降旗康男。
 夫婦の情愛ドラマであると同時に、ロードムービー。富山から九州への風景が、特に華やかなわけではないが目に優しく、その土地の美しさを感じられる。主人公が移動していく映画は、特にドラマティックでなくてもどことなく楽しい。倉島の自家用車は妻と自動車旅行することを夢見て後部座席が改造されているのだが、なかなかにクオリティ高い。倉島が木工技術の技官と言う設定は、この車改造のためだったのかと思うくらいだ(笑)。
 全般的にドラマは淡白で、倉島と妻とは仲睦まじいが、お互いに饒舌ではない。この、饒舌ではなかった、会話を十分にしてこなかったのではないか、今まで妻の意図を十分に理解してこなかったのではないかという部分が、妻の死後、倉島の後悔に繋がっている。なので、映画全体の淡白さが少し物悲しくも感じられた。
 で、淡白な映画なのだが、演技の臭みのようなものが気になり、見ていてむずがゆくなるようだった。個々の俳優がどうこうというのではなく、映画の型みたいなものに作品をはめすぎな気がしたのだ。その型が、きゅうくつそうな俳優も何人かいた。たけしにしろ草なぎ君にしろ、ああいう役柄なら、もっと野放しな状態が見てみたい(笑)。これは主演の高倉健についても、ちょっと思ったことだ。窮屈というのでもないが、渋くて素敵だけど、もっと色々な顔を見てみたいなぁと思わなくもないのだ。ちゃらんぽらんだったりお茶目だったりする役もハマる方だと思うのだが、世間が要求する健さんは本作のような健さんなんだろうなぁ・・・。