多和田葉子著
極北からソ連(らしき国)へ移住し、サーカスの花形を経て作家となった「わたし」が綴る自伝、その娘でサーカスで活躍したトスカ、ベルリン動物園でスターになったトスカの子供。3代にわたるホッキョクグマたちの物語。なおクヌートは実在のホッキョクグマ。読み始めると、あれ、「わたし」ってシロクマ?ていうかシロクマがなぜ会議に?!と戸惑うが、読み進むうちに人間と動物の境はあいまいになり、遠方からはるばるやってきた一族の歴史としてそれぞれの人生(熊だけど)が立ち上がっていくる。代が進むにつれ故郷の記憶は薄れ(クヌートはそもそもベルリン生まれだし)、人間と言語を共有できなくなっていく。「わたし」やトスカは神話の世界に生きているが、クヌートはこの世で生きているようにも見える。その分、クヌートの孤独が胸にしみた。「わたし」が綴る物語や、トスカが調教師の女性と交わす魂のつながりみたいなものは、彼にはない。人間は彼に、地球温暖化防止、環境保護のアイコンであることを一方的に背負わせるたが、それもまた傲慢ではなかったか。