1902年、ジョルジュ・メリエス脚本・監督のサイレンス映画。ジュール・ヴェルヌの小説『月世界旅行』を簡略化、アレンジした月旅行物語だ。モノクロ版のほか、彩色版があり、今回見たのは1993年にカタルーニャで発見された、現存する唯一の彩色版を復元したもの。
 月にロケットが突き刺さるシーンなど有名なショットは知っていたが、全部見たのは初めて。月に行って月世界人と会ってモメごとを起こし逃げ出す、という極めて単純なストーリーなのだが、細部まで細かく作りこんであり楽しい。SF映画の原点と言われるのもわかる。ドキュメンタリーと合わせて見ると更に、メリエスのアイディアがふんだんに盛り込まれているのがわかった。これ、セット作るのも撮影するのも楽しかっただろうなぁ。セット自体はほぼ書割なのだが、出演者数はそこそこ多く、結構な大作映画だ。メインの出演者だけでなく、モブの人々もちゃんとエキストラ使っていてにぎやか。また、女性たち(レビュー的におそろいの衣装でずらっと出てくるシーンがいくつかある)の衣装にはそこはかとないフェティシズムを感じた。ぴったりとして体のラインが浮き出る軍服風の衣装や、足を思い切りよく出しているショートパンツ衣装など、当時はかなりセクシーだったのではないだろうか。フランス人はやっぱり胸より尻・足なのか(笑)
 彩色版の破損している部分は、従来のモノクロ版と照らし合わせて補完し、色は彩色しなおしたそうだ。フィルムを全てデータ化できるようになったからこそ出来た修復だろう。よくここまで再現したなと驚いた。映像の輪郭はくっきりとしているし、色彩もほどほどに鮮やか。あくまで復元なので、遠慮した感じの彩色になっているのだが、公開当時の色彩はもっときつめで、結構どぎつい感じの画面だったんじゃないかなと思った(当時、書割の輪郭がクリアに映るようにかなり強調して描いていたそうなので)。
 なお、当然サイレント映画なのだが、今回公開されたバージョンではAIRが音楽をつけている。製作された時代を無視した(笑)キッチュでサイケな音なのだが、映像と相まって酩酊感を生んでおり、これはこれで面白い。