大場正明著
題名のサバービア(suburbia)は郊外、郊外社会、郊外居住者のこと。現代のアメリカの映画や小説の中に登場する「郊外」の姿から、アメリカ文化をひもとく。アメリカの小説や映画に登場する「郊外」の町を見ていると、こんなところに住んでいたら息が詰まりそう!と思うことがある。緊密な近所づきあいで安心できる反面、少しの差異が大きな問題になっていき、その地域内でのスタンダードから外れることが許されない。そういう排他的で均質的な町はどのように形成されてきたのか。元々は都会から脱出してよりよい環境で暮らす、という生活のレベルアップの意味合いが強かった、また、町は経済的にも同レベルの住民で形成されていて、経済力が上がるともうちょっとハイクラスの地域に引っ越していくものだったのだそうだ。この、コミュニティを強固にしつつ、流動的である、また周囲と親密にオープンに交際する一方で各家庭内の秘密が深まるという、一見矛盾した特質が面白い。その矛盾により家庭のありかたがこじれていくようにも思った。ただ、本著で取り上げられているのは80年代あたりまでなので、現状(特にサブプライムショック以降)はまた変わってきているのだとは思う。日本で言うところの郊外とちょっと意味合いが違うのは、日本は東京対地方の図式が強すぎたからかなと。