19世紀末から20世紀初頭にかけてパリに存在した、高級娼館アポロニド。館一の美人だったが客に顔を切り裂かれたマドレーヌ、客がいつか娼館から連れ出してくれると信じるジュリー、ベテランだが先の見えないレア、華やかな世界に憧れて飛び込んできた16歳のポーリーンら、一見華やかな世界の裏側にある女達の人間模様を描く。監督はベルトラン・ボネロ。
 デカダンスな雰囲気に満ちており、世紀末の風俗に興味があるとより楽しめるのではないかと思う。娼館という「商売」を描くお仕事映画でもある。一見派手な世界だが、金銭面も体力的にもかなりシビア。女性たちは一人で外出することはできないし、衣装代や化粧品は給料から代引きで、結局館のマダムへの借金がかさんで足抜けできなくなっていく。当時は防衛方法がなかった、性病の恐れもある(月一で健康診断を受けるのだが、膣検診を全員嫌がっている。検診方法が今と殆ど変わらないのが意外)。一仕事終えた後、疲れて眠っちゃいそう、というのが挨拶代わりの世界だ。きれいな格好はできるがリスクは高く、自由は少ない。
 娼館の人間模様を映すが、客である男性についての言及はごく少ない。あくまで娼館の女性たちの人間模様だ。親友とも家族ともつかない仲間意識、微妙につんけんした空気ヤライバル心などが、「職場」感を強める。衣食住も一緒なので、合宿や寮生活のようでもある。一同がピクニックに出かけるエピソードは、彼女らが僅かな自由を堪能しておりのびのびと楽しそうだ。
 ただ、女性が端的に「商品」として扱われる世界なので、(女性としては)息苦しいし若干げんなり。げんなりさを越えさせるほどの映画としての魅力には欠けていたということかもしれないが・・・。娼婦1人1人が得意技を持っているというところが面白い。「人形」なんて体バキバキになって嫌そうだけど。
 ルックスがいわゆる美人、かわいいというよりもどこか(もちろん水準以上の美人だが)特徴があって惹かれる、というタイプの女優が集まっていて、眺めていて楽しい。また、男女共に体つき・顔つきよりも声質にセクシーさを感じる女優・俳優が多かった。