野球選手・尾崎の部屋に空き巣に入った今村(濱田岳)と若菜(木村文乃)は、若い女性からの助けを求める留守電メッセージを聞く。留守電の女性が待つカフェへ出向いた2人は電話をしてきた女性に話しかける。ストーカーに困っているという彼女だが、あたふたと店を出てしまった。原作は伊坂幸太郎の中編小説。監督は中村義洋。中村監督は今回、俳優として出演もしているが、なかなか味があっていいです。音楽は斉藤和義。
 原作、監督、主演、音楽の相性がよく、しっかりかみあっている。中村監督と伊坂原作の相性のよさは『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』で証明済みだし、濱田は『アヒルと~』で起用されている。斉藤は『ゴールデンスランバー』で音楽担当だったがかっこよかった(『フィッシュストーリー』も斉藤が音楽手がけているが監督は別)。それにしても、中村監督作品はほんとに品質安定していて、安心して見られる。こういうタイプの映画監督が国内でもっと育つといいんだが・・・。
 本作を見て実感したのは、濱田の俳優としての能力・魅力の高さだ。かなり特徴のあるルックス・声なのでともすると飛び道具的な使われ方になりそうだが(実際『ゴールデンスランバー』ではギリで飛び道具っぽかったし)、そうはならなずしっくりなじんでいる。他の人がやったらやりすぎの下品さが出そうだけどこの人がやったらそうはならない、という点では原作の伊坂作品と近いところがあるように思った。シチュエーションとかセリフ回しとか、やりようによってはかなりイヤミになってしまうだろう。
 先日『さあ帰ろう、ベダルをこいで』を見た時も思ったのだが、こういうのが映画の終わり方だよなー!と叫びたくなる清清しさのあるラストだった。これがフィクションの役割ってやつだと、こみ上げるものがあった。月並みといえば月並みの展開だが、そこへもっていくまでの見せ方が上手なのだと思う。
 なお、尾崎の部屋にある本棚の本の並び方が妙にリアルだった。あのラインナップ、だれかの本棚の中身をそのままもってきたみたいだ。