イギリス軍特殊部隊出身の民間傭兵ファーガス(マーク・ウォーマック)は、バグダッドに赴任していた同僚で幼馴染の親友・フランキー(ジョン・ビショップ)が死んだという知らせを受ける。フランキーは、バグダッド空港としないのグリーンゾーン(米軍管理地域)を結ぶ、最も危険な道路「ルート・アイリッシュ」移動中に攻撃されたらしい。ファーガスは当局の発表に不信感を抱き、独自に調査を始める。監督はケン・ローチ。
サスペンス風のストーリー、そして主人公が傭兵で腕っ節が強いという、ぱっと見ケン・ローチらしからぬストーリーだ。展開はスピーディーで、エンターテイメント性も高いと思う。だが、やはりケン・ローチはケン・ローチ。今の世界でこれが問題だと思う、というものに対して声を上げている。今回取り上げられているのは民間軍事会社だ。
 主人公であるファーガスは元イギリス軍兵士で、自分で傭兵会社を起こしているので、元々は戦争が悪い(社会的にはない方がいいだろうが自分にとっては飯の種で善悪判断するようなものではない)、軍事産業が悪いとは思っていない。しかし、フランキーの死に疑問を持ったことで、自分も関わっていた民間軍事会社の暗部に気付いてしまう。彼はフランキーの無念を晴らし真相を解明する為に奔走するのだが、やがて、その「暗部」には自分もまた関わっていて部外者ではないのだということに気付いていく。気付くというよりも、見ようと思えば見えたはずのものを今まで見てこなかったと言った方がいいのかもしれない。最初、軍事会社の思惑についてのファーガスの語り口が妙に他人事ぽくて違和感を持ったのだが、彼にとってはあの段階では確かに他人事だったのだろうと思う。ある事態をきっかけに、自分も「奴ら」の側の人間だと確信してしまったファーガスが選ぶ道は、あまりに痛ましい。しかし彼にはもう他の選択は出来なかったのだろう。
 見えたはずのものを見てこなかったという点では、フランキーの妻・レイチェル(アンドレア・ロウ)も同様だ。彼女はフランキーの死後、彼の仕事についてもっと聞いておくべきだったが疎ましくもあり聞けなかったと洩らす。そして、戦場での体験を共有するファーガスに怒りをぶつけるのだ。でもレイチェルのそこまで見たくない、ちゃんと知っておいたほうがいいのだろうがつい保留してしまうという心情はすごく良く分かる。
 ファーガスの人となり・生活の見せ方が無駄なく的確。冒頭から喧嘩っ早くアルコール依存症気味である、激昂しやすい性格であるという部分が後半になって響いてくる。また、意外といい部屋に住んでいるのでお金は持っている、軍事産業って儲かるんだな~ということがわかったり、そこそこ裕福なはずなのに室内は殺風景(ベッドが簡易ベッドなのには驚いた)で生活の快適さにはあまり重きを置いていないことがわかる等、セリフ以外の部分で「こういう人」だとわかってくるところが上手い。拷問の仕方がシンプルだったり、失明した友人が夜中に魘されたりしているところから、彼の仕事の過酷さが垣間見られるというのもさりげなくてよかった。