金策に困っている金属加工工場経営者の男。そこへ知人からわけありの注文が舞い込む。拳銃を作ってほしいというのだ。お金ほしさにやむなく引き受けた仕事だったが、男は徐々に拳銃作りそのものに引き込まれ、ついには破格の破壊力を持つ大型拳銃の製造に成功する。監督は『へんげ』の大畑創。本作は2009年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で、オフシアターコンペティション部門審査員特別賞を受賞した。
 30分の短編自主製作映画で、『へんげ』に比べると当然つたないし更に低予算ぽい。ただ、やっぱりカメラアングルとかは最初からかなりしっかりしていた人なのかなと思った。『へんげ』では実際に何か異形のものに取り付かれ、変化していく男が登場したが、本作の主人公もまた、拳銃に取り付かれて変貌していく。中盤までは殺伐とした犯罪映画っぽいのだが、「大拳銃」が完成すると映画が違うジャンルになったようなテンションの上がり方だ。「拳銃に取り付かれた男」という設定ならもっと違う、リアル寄りの演出でもいけるはずなのだが、そこであえてそれか!というところが面白いし、好みが別れるところでもある。笑っちゃう人もいるんじゃないだろうか(これは予算が限られていて技術的に・・という問題もあると思うが)。
 『へんげ』にしろ本作にしろ、個人の中に隠された暴力性が表面化していく。その表面化によって映画自体のジャンルがずれこんでいくような感覚があった。また、どちらの作品でも女優の起用がうまくマッチしていると思った。どことなくなまめかしくて、この人何かやらかしちゃうんじゃないかなという気配を感じさせる。