オスカー・ワイルドが1891年に発表した戯曲を原作にした、1923年の作品。監督はチャールズ・ブライアント。サロメを演じたのはアラ・ナジモヴァ。兄を殺して王の座を奪い、兄の妻ヘロディアを娶ったヘロデ王。しかし王はヘロディアの娘・サロメに魅せられる。一方サロメは投獄されている預言者ヨカナーンに邪険にされ、王の前で踊った褒美としてヨカナーンの首を要求する。
 サイレント映画見るのは初めて。劇場の判断で音楽をつけることもあるんだろうが、今回は本当に無音での上映だった。音のついている映画に慣れているので、なんだか奇妙な感じだった。観客が身じろぎする音がダイレクトに聞こえて居心地悪い・・・。
オスカー・ワイルド版が原作だからか、美術面にはビアズリーの挿絵の影響を感じた。衣装にしろセットにしろ、当時としては豪華なのだと思うが、装飾過剰気味で華美。そしてなぜかとてもゲイゲイしい(メイクなどはビアズリーの挿絵の雰囲気に合わせているのだと思うが)。当時はこういうのが流行っていたのか、それとも本作が異色だったのだろうか・・・受け止められ方が気になる。
 サロメ役のナジモヴァは決してスタイルが抜群とか美人とかいう風貌ではなく、むしろ小娘感が強い。サロメというキャラクターの方向性には合っていると思う。また、ヘロディアがすごく崩れた感じになっているのが、ちょっと衝撃だった。
サイレント映画の場合、俳優の演技はトーキーとは大分方向性が違うんだなと思った。当然ジェスチャー重視、パフォーマンス性が高いんだなと。同じ映画という形態ではあるが、トーキーとは別物の娯楽・芸術と思った方がいいのかもしれない。