ジェイムズ・サリス著、鈴木恵訳
養父母の元から逃げ出し、カリフォルニアで映画のスタント・ドライバーとなった青年。やがて運転の腕を買われ、逃走車輌の運転手として裏社会でも活躍するようになる。ある日、彼が運転を請け負ったヤマが仲間割れにより失敗。なんとか逃げ延びた彼は、苦境を切り抜ける為の勝負に出る。本作を原作とした映画がもうすぐ公開される(題名は原作と同じく『ドライヴ』)ので、予習として読んでみたのだが、これが面白い!このテイストを再現しているのなら映画も相当面白いと思う。過去と現在を行き来し一つの時点にたどり着く、ともするととりとめのない構成なのだが、主人公である「ドライヴァー」のつかみどころのなさと共鳴しているように思う。文体はドライで簡潔。そっけないと言ってもいいくらいだ。しかしグルーヴ感があり(これは翻訳もうまいのだと思うが)それこそドライブしているみたいだ。そしてちょっとしたところが繊細。主人公の一見わかりにくい誠実さや真面目さ(自覚はあまりないみたいだが)、落とし前の付け方にぐっとくる。ちりばめられた映画や小説に関わる小ネタも魅力だった。映画と合わせて楽しみたい。