トーキョーノーザンライツフェスティバル2012にて鑑賞。『春にして君を想う』(1991)のフリドリック・トール・フリドリクソン監督作品。新作映画『春にして君を想う』の試写会場で、監督は試写に訪れていた母親ゴゴ(クリストビョル・キィエルド)にも謝辞を述べる。充実した一人暮らしをしていたゴゴだったが、アルツハイマーを発症し、徐々に言動がおぼつかなくなっていく。心配した息子達はゴゴを介護施設に入れることにするが。
 作中監督の新作映画タイトルからわかるように、フリドリクソン監督の実体験が元になっている(母との関係以外でも、映画の興行成績が悪くて借金まみれになったり、海外でのヒットに望みを託したりと笑えない)。ゴゴの「老人が施設から逃げ出す映画を撮ったのに私を施設に入れるの?!」という言葉は、フリドリクソン監督自身に跳ね返ってくる、皮肉なものだ。ゴゴの物忘れがひどくなったり猜疑心が強くなったり、息子の妻を罵倒したりという行動や、その行動に振り回される子供達の疲労が、ちょっと痴呆あるある状態ぽくて、見ている側も落ち込みそうになる。もう、本当に大変そうなんですよ・・・。息子は母親を愛しているから施設入居は苦渋の決断なのだが、それでも責められる。何より、息子も口にしているが、自分が慣れ親しんでいた人がだんだん別の人のようになっていくという過程が、いたたまれないのだ。
 しかし、ゴゴには時間の感覚や記憶がぼんやりしても、変わらない核がある。それは亡き夫との思い出だ。夫は幽霊(幻影)という形でゴゴの前に現れる。ゴゴの願望が夫の形をとって現れるようにも見えるが、彼女が夫の記憶に支えられているのは事実だ。若い頃の2人の姿は初々しく映画みたい・・・と思ったら、実際にゴゴ役のキィエルドと夫役の俳優が共演した映画の抜粋なんだとか。モノクロ映像が美しかった(キィエルドがまたかわいい!)。
 舞台であるアイスランドの風景も印象に残る。都市部は他のヨーロッパ都市とそう印象変わらないが、ちょっと海沿いや山側に出ると、いきなり大平原が広がっていたり、山がそびえていたり、ゴゴが入る施設なんて周囲が荒野だ(笑)。見ていて飽きない(その土地にずっと住んでいたら普通のことなんだろうけど)。
 なお、ゴゴのアルツハイマーが進むと、「息子が一番かわいい」傾向が如実になって、あー世の母親はやっぱり・・・と若干うんざり。娘は息子の次で、息子の嫁はどんなに出来た嫁でも気に食わんというのは万国共通の傾向なのか。