ナタリア・ギンズブルグ著、須賀敦子訳
前々からいずれ読んでみようと思っていたのだが、白水Uブックス版が出たので、ようやく手に取った。19世紀イタリアにおいて国民的な詩人・作家であり、建国の父とも言われたアレッサンドロ・マンゾーニとその一族の生涯を、彼らが取り交わした膨大な書簡から再構築していく。ギンズブルグは小説家だが、本作は実存する書簡からの引用が大部分を占めている。いわばノンフィクションなのだが、人物ごとに章立てされた構成や時系列の整理の仕方、そして意外と饒舌な手紙の数々により、大河小説のような味わいになっている。組み立てと抜粋の仕方が冴えているのだと思う。マンゾーニについては全く知らなかったのだが、イタリアでは学校の教科書に文章が掲載されるような人なのだそうだ。といっても、本作は「文豪」マンゾーニを描いているわけではない。著作に関する記述はむしろ少なめだ。大部分を占めるのが題名の通り、彼の家族の状況だ。マンゾーニはあまり筆まめではなかったらしく、友人や親族としばしば文通が途絶えているし、自分の手紙の中で筆不精をわびている。頻繁に手紙をやりとりしているのは、彼の妻や子供達、特に女性陣だ。特に文才がある手紙というわけではないのだろうが、当時の貴族の生活の様子、家族・親戚のありかたが垣間見られて面白い。マンゾーニは家族に悩まされ続けた人のようだ。全員病弱で心配が絶えず、そして大人になってからは散々お金をせびる。マンゾーニは尊敬は得ていたが決して大金持ちではなく、金策に四苦八苦している。マンゾーニ家はお互いに段々親密さを失い、ばらばらになっていくのだが、当時の交通事情や通信事情以上に、お金や健康面での苦労が多すぎたのかなという気もしてくる。うーんせちがらい・・。家族だけでなく、ある人とある人が親密になり、しかしある時を境に疎遠になっていく。その流れが不思議でもあり、さびしくもある。