幕末、文久2(1862)年。北の吉原と称される品川の色町に、佐平治(フランキー堺)という男がやってきた。遊郭・相模屋で遊び呆けるが懐には一文もなく、居残りと称してそのまま店の手伝いとして居座ってしまう。様々な古典落語を下敷きとした、川島雄三監督、1957年の作品。日活創立100周年記念として、ニュープリントとなって上映された。
 私は恥ずかしながら、川島監督の作品を見るのは初めて。すごく洒脱で軽やかで、面白かった!本作に出てくる人たちには、清廉潔白な人はいない。皆がめつかったりちゃっかりしていたり、みっともないところもある。しかし、だらしないが逞しい。遊郭の女たちの根性の据わり方はもちろんなのだが、純情健気そうな女の子が、父親にお金が必要だから結婚して!と奉公先の息子に迫ったりもする。皆生きていく為に一生懸命だ。
 その最たるものが主人公の佐平治。彼のがめつさ、要領の良さは実に羨ましい(笑)。やりようでは単にイヤミな奴に見えそうなところを、フランキー堺の洒脱さ、軽さでいやみのないものになっていると思う。加えて、彼のがめつさは同時に、死への不安への反動とも見える。絶対に死なない、まだまだ生きるんだという執念が、彼を商売に駆り立てているんじゃないかと思った。そういう意味ではどこか儚げでもあるのだ。
 女たちのちゃっかりとしたところが、とてもかわいい。隣にいたら嫌だろうなーとは思うが(笑)、憎めない。この世がめんどくさくなり、手近な「いなくてもいい男」と心中を図ってうっかり自分だけ生き残ったりしても、全然悪びれない。客からは取れるだけむしり取るぜ!という根性も頼もしい。見ていてウキウキしちゃう。
 ドブ底からでも生きてやる!と言わんばかりの活気が画面から溢れだしている。このエネルギーは、今だからこそより訴えてくるものがあるんじゃないかと思う。人の機微は描いても人情ものというほど湿っぽくなく、ドライなところもいい。今の日本のコメディ映画で、ここまで軽やかに洒脱に出来たものってあったかなぁと、ちょっとさびしくもなった。