デボラ・ソロモン著、林寿美・太田泰人・近藤学訳
箱の中にコラージュを収めた独自のアートを制作し、様々な芸術家に影響を与え、愛されてきたジョゼフ・コーネル。日本では特に愛されており、まとまったコレクションもある。そのコーネルの、ほぼ初めてとなる本格的な伝記。私もコーネルの作品はとても好きなのだが、彼がどういう人なのかということはあまり知らなかった。本作は彼の生まれ育ちから作品の変化、そして死に至るまで丁寧に追っている。資料としても貴重な、大変な労作だと思う。経済的に家庭を支える必要があったという話は聞いたことがあったが、母親、そして体が不自由な弟との関係が彼の人生、そして作品に大きく影響していることがわかる。本著のサブタイトルのように、彼の作品の美しさ(そして儚さ)は、彼が得られなかった世界が箱の中に納められていることにあるのだろう。コーネルの自作に対するスタンスが興味深い。彼は作品によって認められたい・金銭を得たいという願望は持っているのだが、同時に、自分の作品が誰かに買われる、誰かのコレクションに加えられることを恐れてもいた。認められたいが、広く認められることには抵抗があったようだ。作品が批評されることにも大概不満だった。作品があまりにも自分に近く、誤解をされることをとても嫌だったのだろうか。そういうメンタリティの人が芸術で広く成功を収めるのはやはり難しいだろう。コーネルも一部では早くから評価されていたが、大規模な個展が企画されるようになったのは本当に晩年になってからだった。また、人のえり好みも激しく、女性に対するあこがれはあったが概ねプラトニックな崇拝・愛着に留まっていた。上手く大人になりきれなかった人のようだ。現代の人だったら、案外アニメオタクだったりしたんじゃないだろうかという性質。彼の作品の箱庭的な美しさは、実体験していない世界への憧れからだったのかもしれない。
箱の中にコラージュを収めた独自のアートを制作し、様々な芸術家に影響を与え、愛されてきたジョゼフ・コーネル。日本では特に愛されており、まとまったコレクションもある。そのコーネルの、ほぼ初めてとなる本格的な伝記。私もコーネルの作品はとても好きなのだが、彼がどういう人なのかということはあまり知らなかった。本作は彼の生まれ育ちから作品の変化、そして死に至るまで丁寧に追っている。資料としても貴重な、大変な労作だと思う。経済的に家庭を支える必要があったという話は聞いたことがあったが、母親、そして体が不自由な弟との関係が彼の人生、そして作品に大きく影響していることがわかる。本著のサブタイトルのように、彼の作品の美しさ(そして儚さ)は、彼が得られなかった世界が箱の中に納められていることにあるのだろう。コーネルの自作に対するスタンスが興味深い。彼は作品によって認められたい・金銭を得たいという願望は持っているのだが、同時に、自分の作品が誰かに買われる、誰かのコレクションに加えられることを恐れてもいた。認められたいが、広く認められることには抵抗があったようだ。作品が批評されることにも大概不満だった。作品があまりにも自分に近く、誤解をされることをとても嫌だったのだろうか。そういうメンタリティの人が芸術で広く成功を収めるのはやはり難しいだろう。コーネルも一部では早くから評価されていたが、大規模な個展が企画されるようになったのは本当に晩年になってからだった。また、人のえり好みも激しく、女性に対するあこがれはあったが概ねプラトニックな崇拝・愛着に留まっていた。上手く大人になりきれなかった人のようだ。現代の人だったら、案外アニメオタクだったりしたんじゃないだろうかという性質。彼の作品の箱庭的な美しさは、実体験していない世界への憧れからだったのかもしれない。
コーネルの作品の背景を知ることができるのと同時に、自分が何故コーネルの作品に惹かれるのかもわかりそうな内容ですね。
私の中ではなんとなくダーガーと被るものがあるのですが、くらさんのレビューを拝見すると人物も少し似たところがありそう……?
読んでみたいと思います。