一人山小屋に篭って自給自足の生活をしながら、手製の爆弾を大企業やマスコミに送っている青年・良一(瑛太)。ある日、彼は雪山で奇妙な怪物を見る。怪物は頻繁に彼の前に現れるようになった。そして死んだはずの弟(KenKen)や兄(窪塚洋介)が目の前に現れる。監督は豊田利晃。
 主人公の設定は、実在するアメリカの爆弾魔ユナボマー(本名セオドア・カジンスキー)がモデルになっているそうだ。良一は資本主義が支配する現代社会に疑問を持ち、社会と隔絶した環境でひっそりと暮らしている。爆弾や毎日綴る日記は、社会を変えようという意思の表明だ。だが、良一の思想・行動は、どこかの誰かの思想・行動のつぎはぎという印象が強い。この道はいつか来た道、しかも大分昔にすたれた道ではないか。なぜ今になってこれなのか不思議だ。現代よりもすこし前の年代を舞台にしているような感じはするが、それにしても時代錯誤だと思う。いきがった10代の青少年が聞きかじった政治哲学思想を口にしているみたいで、どうにも面映い。
 豊田監督はおそらく、あまりポリティカルな人ではないし、思想や手法を言語化・文法化するのも苦手なのではないだろうか(というかそういう志向自体がないのでは)。良一が世間に訴えようとする内容は空疎なのだが、これを良一の言葉が空疎であるという設定で行っているのか、やってみたら空疎に見えちゃったのか、ちょっと判断がつかない。あんまり言葉や文脈で表現しようとしない方がいい人なのかな。宮澤賢治の引用も、そこにシンパシーを感じたのはわかるが本作の内容とはちょっと趣旨が違う(というか本作がそこまで追い付いていない)感じで取ってつけたみたい。
 反対に、優等生タイプの良一が世の中を悟ったような兄に対して抱えているコンプレックスや、自由人ぽい弟へのイラつき等、家族の中での違和感や不協和音の方が実感でていたように思う(兄が小難しいことしゃべりはじめるととたんに嘘くさくなるが)。こういう、もやっとした部分の方にもっとスポットが当たると良かったのに・・・。
 モノローグ、ダイアローグともに弱いが、主演の瑛太の力と、撮影の良さで画面がもっている。ロケ地は最上だそうで、雪の山中はものすごく寒そうだが美しい。ロケ地に助けられているなと思った。瑛太が寒い中すっぱだかで自家製シャワーを浴びているシーンがあるのだが、頑張るな~。