地質学者のトム(ジム・フロードベント)とカウンセラーのジェリー(レスリー・マンヴィル)夫妻の趣味は、市民農園での野菜栽培。夫妻の元にはジェリーの同僚メアリー(ルース・シーン)やトムの幼馴染のケンが話をしに訪れる。監督はマイク・リー。
 予告編だと、ある夫婦を中心とした心温まるヒューマンドラマ・・・な感じだったのだが、さすがマイク・リー監督といったところか、全然そういう話じゃなかった。中身をストレートに反映させた予告編では客が来ないと配給会社が踏んだのか。
 夫妻とその友人達の生活を、1年を通して描いた作品。中心にいるのはトム&ジェリー夫妻(仲良くケンカはしない)だが、本作で重要な位置を占めるのはメアリーだ。メアリーはジュリーが勤務するクリニックで医療事務をやっている中年女性。かつては結婚していたが、離婚し今は独り身だ。彼女は寂しいとすぐジュリーを訪ね、酒に酔ってつぶれてしまう。彼女にとってジュリー夫妻は理想の家族で、そこに参加したくてしょうがないのだろう。冒頭、ジュリー宅を去る時の未練がましさに、うーんと唸ってしまった。彼女はジュリー夫妻の30歳の息子にアプローチしてくるのだが、これも「この家族の一員になりたい」という思いからだろう。決して悪い人ではないのだが、どうも困った人だな・・・と見ているうちに苦笑いしてしまう。ジュリー一家への一方的な依存が強いのだ。彼女の行動、そしてラストシーンを見ると、本作の邦題がとても皮肉のきいたものに思える。確かにそこには「家族の庭」がある、でもあなたは家族じゃない、という話ではないかと。
 メアリーが自分は運が悪い、不幸だと嘆き、ジュリー達に執着するのは、不思議にも思える。傍から見ると、彼女は自分で言うほど不幸ではない気がする。金持ちではないがちゃんと働いているし、男運は悪いが年齢の割りにはルックスも悪くない。色々楽しめそうなのに、何でそんなに不満だらけなのかなーと。彼女が人一倍寂しがりやで、誰かと一緒にいたい人だということなのかもしれないが。でも本人のスタンスが変わればあっさり解決しそうな気もするので、見ていて不思議なのだ。
 また、最後のシーンで如実に現れるのだが、仮に仲良くしていても育った環境の違いによる溝は往々にして埋められないんだよな~とどんよりした気分に。このへん、かなり実も蓋もない見せ方なのだが、監督の中にはそういう実感があるんだと思う。過去作でも、登場人物の所属する階層にかなり気を配っていた感じがした。その辺の差異に敏感な人なのだろう。人間はやっぱり似た環境で育った人同士で集まってしまいがちだ。本作ではメアリーがアウェイだけど、集まる人によってはジュリーがアウェイということも当然ある。