「フレデリック・ワイズマンのすべて」にて鑑賞。フレデリック・ワイズマン監督、1973年(モノクロ)の作品だ。題名の通り、少年裁判所にやってくる少年少女や、そこで働く裁判官、検事、弁護士、ソーシャルワーカーらの姿を映す。監督の作品は全てそうだが、音声・字幕によるナレーションや解説、撮影対象へのインタビュー等は一切ない。
 舞台が裁判所だからというわけでもないが、ミステリ映画っぽさもあってとても面白い。被告の証言が正しいのかどうかは、作品内でわかるわけではもちろんない。しかし、ミステリ的にはこうだろうなー等、色々深読みしたくなる。特に児童レイプ事件の被疑者は有罪か無罪か、気になった。
 判事をはじめ、スタッフの姿勢は一様にクールだし厳しい。少年裁判所なので当然未成年が相手なのだが、かける言葉はさほど優しいものではない。かといっていい加減というわけでも相手をいびるというわけでもない。スタッフにとっては仕事の一貫、しかし仕事としてちゃんとやる、というプロの姿勢だ。そういう職業人としての姿勢の中にも、ふっとその人個人の性格みたいなものが垣間見える瞬間があって、そこが面白い。特に判事はなかなか面白いキャラクターなのではないかと思う。
 児童相談所ではなく裁判所なんだよなぁと強く感じたのが、最後に出てくる強盗に関する裁判。被告の少年は、自分は脅されて強盗犯の運転手をしただけだと主張する。しかし、彼が犯罪に加担したということは事実だ。少年の認識が甘すぎるんじゃないかという部分もあるのだが、どういう事情であれ罪は罪だと判断される。
 弁護士も、仮に控訴しても有罪は免れないと判断し、判事・検事と合意の上で少年院へ送るという方向で話を進めるというのが興味深かった。弁護士の「君はずっと私を恨むだろうが」という言葉も重い。控訴し、成人として裁判しなおすよりも少年院に行った方が処分としては軽いのだが、パニックを起こしている少年にはそれがわからないのだ。裁判所側の冷静さと対称的(親もちょっと諦めている感じなのが何ともいえない)。