「フレデリック・ワイズマンのすべて」にて。1991年の作品。19世紀には銀鉱山として知られ、現在は登山、スキー等のリゾート地になっているアスペン。観光客で賑わうアスペンと、そこに暮らす人々を映した作品。
 元々は鉱山だった町がウィンタースポーツ向けのリゾート地になった、という成り立ちがあり、華やかな観光地としての側面と、ごくごく普通の小さな町であるという側面との両方が浮き上がってくる。スキー場がある他、裕福な層が集う別荘地や、洒落たコテージやホテルが立ち並んでいる。ホテルで宿泊者向けに開かれているらしい絵画教室の様子が映されるが、講師のいい加減さがおかしかった。とりあえずどの人の絵も褒め、表現は自由だ!と言うのだが、その言い方が投げやりで、この人もう酔っ払ってるんじゃないのって思った。
 スキー場だけではなく、いかにもリゾート地らしい洒落たショッピングエリアにも人がたむろっていて賑やか。スポーツジムやクラブ等もにぎわっている。ただ、どこかで見たことあるような風景だ。リゾート地、特にスキーリゾートはフォーマットが完成されているのか、どこも似通っているような気がする。スキー場そのものの作りはもちろんだが、スキー場付近の建物がヨーローッパの田舎風に改築されている感じとか、日本でも似たような雰囲気だよなと思った。
 一方で、普通の地元民としてこの土地に住んでいる人たちもいる。作中でよく出てくるのが、地元の教会主宰の集まりだ。特に教会の活動が活発な地域なのか、どこもこんな感じなのかは分からないが、教会が地域社会で重要な位置を占めているらしいことがわかる。「キリスト教徒にとっての離婚」「キリスト教徒にとっての経済活動」みたいなテーマの話し合いの場や市民講座が開かれていて意外だった。少なくともニーズが一定数あるということなんだろうが・・・。また、読書会が盛り上がっている様子が面白い。古典文学作品(誰の作品か忘れてしまった)を取り上げているのだが、ヒロインが不幸か幸せか、聡明なのかバカなのか、またリアルに書かれているのか否か、意見が真っ二つに割れて紛糾している。語りたがりな中年女性と、いかにも頑固そうな年配男性の個性が際立っていた。
 地元民の生活は、観光地の華やかな様子とは全く無縁に見える。もちろん観光業で働いている人たちも多いのだろうが、それ以外の人も当然多い(結婚何十周年かのパーティーを開いている夫婦の夫は、地元の消防隊員だったらしい)。スキー場でレースが行われている一方で、かんじきを履いた地元の小学生たちが、教師に引率されて自然観察していたりして、対比が際立つ。対比がより際立つような編集にしているのだろうが、観光客と地元民の間に接点が窺えないところが気になった。