リチャード・モーガン著、田口俊樹訳
27世紀、人類は銀河系の惑星に散らばり、魂はデジタル化されて小さなメモリー・スタックに保存され、肉体を乗り換えることも可能になっていた。元・特命外交部隊コマンダーで、ある事件を起こした為に100年以上投獄されていたタケシ・コヴァッチは、ある条件で解放された。地球に降りたち、大富豪が自殺した事件の真犯人を探せというのだ。フィリップ・K・ディック賞を受賞した作品。肉体を乗り換え可能という設定はSFではよくあるが、本作の場合、「スリーブ」と呼ばれる肉体の保存やクローン化にはそれなりのコストがかかり、富豪レベルでないと不滅の魂というわけにはいかない、また、スリーブを乗り換える毎にハードとソフトのすり合わせは困難になり、実際は何度もやりたくなくなる等、一定の制限がかかっているところが面白い。人工のスリーブは見ればすぐわかるというあたりも、便利すぎない匙加減が上手い。魂までデジタル化された未来世界が舞台で、特殊な訓練を受けたコヴァッチはデジタル化された兵士の最たるものなはずなのだが、その行動が案外ウェット。人間の有り方に対して合理的にはなりきれないし、人を物として扱う訓練を受けているのに根が優しく、ロマンティストな一面がある。古き良き時代のハードボイルドな探偵といってもいい。SFという舞台設定ではあるが、根底に流れるのはハードボイルド小説のメンタリティであるように思った。


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