ペール・ペッテルソン著、西田英恵訳
老境に差し掛かり妻を亡くした「私」は、森のそばの小さな家に移り住む。ある日顔を合わせた隣人が、少年時代の知り合いであると気付く。最初、15歳の頃の「私」と友人の関係が決定的に変わってしまった出来ごと、そして友人の人生が大きく動く出来ごとが語られる。年配者としての現在から、すっと少年時代へ意識が移り、また現在へと戻る。脈略がないようでいて、「私」が人生の岐路に立って揺らいでいるという状況は共通している。「私」の瑕のようなものになっているのは、父親との関係だ。「私」と父親とは仲が悪かったわけではなく、むしろいい父子関係だった。しかしある時から、父親に「私」には見えない部分、理解の及ばない部分があることに気付いていく。少年時代の記憶から、徐々に当時父親が何をしていたのか、どういう時代だったのかという部分が見えてきて、ミステリ的な面白さもあった。少年のころには見えなかったことが、老境に差し掛かった「私」には見えてきているはずなのだが、あえて明言はされておらず、少年時代の「わからなさ」がそのままになっており、それが切ない。