川本三郎著
小説や映画、漫画などのフィクションのうち、出てくる子どもが印象に残るものをピックアップしたエッセイ集。ミステリ作品であってもさっくりネタバレしているのでネタバレ気にする人にとってはガイド本には不向きだが、既読・既鑑賞作品が多く懐かしい思いで読んだ。著者は本著内でも明言しているが、現実の子どもに強い関心があるわけではなく、子どもが出てくるフィクション、フィクションの中の子どもにひきつけられるのだと言う。私も子どもが出てくる映画は見てみたくなるが、特に子ども好きというわけではないのでちょっと共感。現実世界の子どもについて言及した部分は時代(80年代)を感じるが、フィクションの中の子どもについて書いている部分は時代を超えた普遍性があるように思った。取り上げられる作品、特に映画は、いわゆる大作名作よりも、ちょっとした佳作秀作といった感じの作品が多い。著者のお気に入りなのだろう、『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』が度々取り上げられている。本著が書かれた当時に公開されたという事情があるのだろうが、子どもの孤独が描かれた秀作だと思う。また、私はちゃんと読んだことがないのだが、楳図かずお『わたしは真吾』に関するエッセイがいい。実際に読んだような感動がある。