アヴラム・デイヴィッドスン著、池央耿訳
19世紀末のスキタイ=パンノニア=トランスバルカニア三重帝国を舞台に、法学博士、医学博士、哲学博士その他諸々の博士号を持ち名高い貴族でもあるエステルハージ博士が、不思議な事件に挑む。短編集だが、殊能将之による解説にもあるように、通して読むことで架空の国の姿・歴史が浮かび上がってくる。この三重帝国は、オーストリア、セルビア、ルーマニア、ハンガリーに囲まれているという設定。このエリアの歴史や文化に詳しければより面白く読めるのだと思う。私は勉強不足で、本作に書かれている虚実入り混じっているであろうペダントリィの半分もおもしろがれていないんじゃないか(面白さの要素に気付いていないんじゃないか)と思う。年をとらない少女や人魚をめぐる幻想的な奇譚がある一方で、これは幻想小説というより奇人変人譚、ホラ話といった面持だなというものも。エステルハージ博士がひょうひょうと何でも受け入れていくので、読んでいるうちに何が起きても別に不思議じゃないなーという気になってくる。