ロジェ・グルニエ著、山田稔訳
人生のちょっとした残念さや残酷さを、ユーモアと諦念をまじえて描く短編集。ペシミスティックだが明るいペシミストといった感じで、湿っぽくない。随筆集『ユリシーズの涙』を読んだ時も思ったのだが、作品との間に適切な距離感があって、感情を過剰に乗せてこないところが読みやすい(人によっては却ってとっつきにくいと思うかもしれないが)。戦時下のすれ違い恋心を描いた「別離の時代」は、そっちの別離かよ!とシリアスさを思わせる題名に突っ込みたくなるトホホ感あふれる物語。やはり苦い初恋を描いた「あずまや」も、これ当人にとってはトラウマになりそうだよな・・・というシチュエーションで、決してかっこよくはない。ただそのトホホ感には人生達観した感があって、あまり切実ではないというか、まあそんなこともあるさと受け流していける雰囲気がある。著者が高齢になってからの作品だからということもあるか。記者時代の体験をネタにしたらしい「その日、ピアフとコクトーが・・・」は仕事をしている人なら皆ギャー!となりそうなシチュエーションを含むが、ストーリーの落とし方は年の功かなと思った。