ヘルツォーク傑作選2011にて鑑賞。ヴェルナー・ヘルツォーク監督2003年の作品。ナチが台頭するベルリン。「千里眼」のショーで人気を博しているハヌッセン(ティム・ロス)は、ポーランドの農村からやってきた怪力のユダヤ人ジョシュ(ヨウコ・アホラ)と知り合う。
 実は本作、日本で公開された当時に見ている(当時の感想はこれ)。今回、ヘルツォーク監督のフィルモグラフィーを追う形で見てみたのだが、監督の作品の中ではかなりバランスが取れている、大人し目の作品だったんだなと思った。間口は広くなっているしわかりやすい。そして、ジョシュの夢の中に蟹の大群は、ヘルツォーク監督の動物の群れ好きによるものなのかしらと(そもそもドイツやポーランドにあんな蟹はいないんじゃ・・・)。小動物の群れ=不吉、不安の象徴なのだろうか。あまりプラスの意味では登場していない気がする。
 題名の意味は、今回の方がより痛切に響いた。ハヌッセンは選ばれたかのように振舞う男。ジョシュは能力があるがそれを使うことの自覚がない男だ。また、ハヌッセンは時代に合わせて周囲に同化しようとするが、ジョシュは逆に自分の生まれは変えようがないことを悟り、生まれついた世界への帰属を表明する。一貫して対称的な2人なのだ。神に選ばれたのはどちらだったのか、やがて明らかになっていく。が、それは彼ら2人の意思とは関係ない。
 ハヌッセンは口が達者で人を動かす力がある。一方、ジョシュは力を持っているが人を動かす言葉の力がない。ジョシュが故郷でナチスの脅威を訴えても誰も相手にしない(「まさかそんなことが」という人間の思考傾向て怖いね・・・)。2人がお互いに足りないものを補い合うことができていれば、あるいは歴史が・・・と「もしも」を思わせるところが切なかった。