ヘルツォーク傑作選2011にて鑑賞。本作は1975年度カンヌ国際映画祭審査員特別賞、国際映画批評家連盟賞受賞、またニューヨーク・フィルムフェスティバル最優秀映画賞を受賞した。19世紀に実際にあった事件を元にしている。ドイツの田舎町に、カスパー・ハウザー(ブルーノ・S)という男が現れた。彼は穴倉に閉じ込められ鎖で繋がれて育ち、喋れないし常識等生活の知識も当然一切ない。人々は彼に興味を示し、教育しようとする。 
 カスパー・ハウザーの話は伝説として結構知られているそうだが、その真相は未だにわからず、本作はヘルツォークが分析してストーリー化したものだそうだ。カスパーはこの世界の者ではない存在、本人が言うように間違ってこの世界に出てきてしまった存在として描かれる。教師による「正直村とうそつき村」の設問でも明らかなように、彼は人の世の「お約束」の外で考え、行動する。ヘルツォークはそうしたカスパーにシンパシーを強く持っているのだろう。辺境にいる人の方が世界を広く・正しく見ることができるのでは?という思いがあるのではないだろうか。それだけに、カスパーの存在の特異さが、解剖され身体上の異変というレベルに落とし込まれてしまうのには、釈然としない。ヘルツォークも、なぜそこで原因を確定してしまうのか?なぜ不可解なものを不可解なままにしておけないのか?という怒りを感じたのではないかと思う。
 カスパーの正体や彼が現れた経緯については諸説あるようだが、ヘルツォークはそういった部分を描こうとはしない。彼が描くのは、彼が突然現れ、突然消えたということだ。カスパーの背景・正体ではなく、その野生児にようなあり方がヘルツォークにとってのカスパー・ハウザーなのだろう。
 鎖に繋がれているカスパーが鼻を鳴らしたりおもちゃをいじったりする様が、すごく動物っぽい。演じたブルーノ・Sという人の独特な風貌(ジャック・ブラックに似ている)が、これまた動物ぽい。よくこの人見つけてきたなー。他の人が演じたのでは本作にはそぐわなかったように思う。