新進女優の舞利亜は、数年ぶりに故郷の町に帰ってきた。廃墟となったホテルを利用したネットシネマの撮影があるのだ。しかし改定されたシナリオは彼女には渡されていなかった。彼女が急遽犯人役となり、臨場感を出す為に改定したものを1枚ずつ渡すというのだ。そして控え室には不気味な落書きが。彼女は4年前に起きた事件を思い出す。当時、女子高生4人で結成された羅針盤という劇団が評判になったが、メンバーの1人が死亡したのだ。原作は水生大海、監督は長崎俊一。原作が「バラの町福山ミステリー文学新人賞」の第一回優秀作だそうで、ロケ地は当然福山。
 原作未読なのだが、ミステリ映画としても青春映画としても、手堅くまとまっていたと思う。省略すべきところは省略する(場面の飛び方が結構思い切っている)作り方がよかった。犯人の正体、犠牲者が誰なのかが伏せられたまま(後者は途中までだが)、過去と現在を行き来してストーリーが進むという構成。どちらかというと活字向きの構造で、映像化は面倒くさそうなのだが、よく頑張って映画化したなぁ。昭和の少女小説とか、ジュブナイルドラマのようなどこか懐かしい味わいがある。少女たち(特に瑠美)の視野の狭さ(あまり大人の立場とかほかの人の都合とか頭にない感じ)も青々しい。
 メインの女優4人が、成海璃子を始め、好演していた。羅針盤は伝説的な高校生劇団という設定。劇中劇の場面では、はっとするような良さがあると同時に、うーんこれが伝説?と思うところもあったのだが、見ているうちに徐々に彼女たちのポテンシャルが引き出されてきているように思った。成海は声を張ると裏返るところが気になるが、一本気で若干猪突猛進、才能あるが故の素直さと鈍感さをよく体現していたと思う。同年代の異性人気はあまりなさそうな人(本人もこの役柄も)なんだが、骨の太い感じがいい。また、演技の才能がある蘭役の惣那汐里は『マイ・バックページ』が記憶に新しいが、旬の人感がさすがにある。やさしいムードメーカーなつめ役の草刈麻有は一見地味だが後半じわじわと巻き返してくるし、ボーイッシュななつめ役の黒川智花も悪くない。
 事件の真相はなかなか陰湿で、女の嫉妬って怖いね・・・と言いたくなるが、舞台が地方都市というのも大きな要素だろう。出たくてもなかなか出られない人からすると、簡単に出て行けそうな人に対して何であなたが、と複雑な気持ちがあるかもしれない。地元ゆえのアットホームさも、犯人にとっては却ってきつかったんじゃないかと思う。