手塚治虫の漫画『ブッダ』を東映がアニメーション映画化。3部作になる予定で、本作は1作目になる。監督は森下孝三。2500年前のインド。シャカ国の王子として、全ての生き物に祝福されて生まれたシッダールタ(吉岡秀隆)は、世界の王になると予言された。しかしシッダールタは階級社会に疑問を抱くようになっていた。一方、奴隷のチャプラ(堺雅人)は強国であるコーサラ国の将軍を助けたことをきっかけに、身分を隠して出世を狙っていた。チャプラの夢はいつか奴隷である母親と再会することだった。
 私は原作漫画は未読なのだが、多分、もったいない感じの映画化になってるんだろうな・・・。本作ではシッダールタが出家するまでの物語と、チャプラがのしあがっていく物語の2本の軸から構成されている(3部作になるそうだが、毎回サブ主人公みたいな存在を立てるのかな)。しかし、この配分があまり上手くない。本来の主人公であるシッダールタの、苦悩が単調・表現不足なので、単に自分探しにうだうだ迷うお坊ちゃんに見えてしまう。貧困や差別を目の当たりにする驚きとか苦しみとか、もっと何かあるだろー!ともどかしくなる。物語としてはチャプラ側の物語の方が面白いので、むしろチャプラ1本でいけばよかったじゃない!と思ってしまう。チャプラの物語は本作内でケリがつくのでまとまりがいいという面もあるのだろうが、とにかくシッダールタのキャラが立っていない。
 他にも、今後も登場すると思われるキャラクターが何人かいるのだが、全員いきなり出てきて機械的に去っていくというような按配で、絡ませ方がぎこちない。原作もこんな感じなんだろうか。いくらなんでもそんなことはないと思うが・・・。
 アニメーションとしても、あまり魅力を感じなかった。原作絵には意外と忠実だと思うが、絵作りがぱっとせず、目を引かれるようなシーンにも乏しい。普通といえば普通なのだが、せっかく大画面で見るのだからもうちょっと映画っぽいものが見たかった。
 なお、冒頭に兎の自己犠牲の寓話が挿入されるのだが、元の寓話を知っていないと微妙に分かりづらいのではないかと思う。ともあれ、あと2本見るには正直辛い。