堀江敏幸著
シリーズ4作目になる著者の随筆集。今回は初の自作詩(これが題名の「象が踏んでも」につながる)も収録されている。「象が踏んでも壊れない」という妙にユーモラスなあのフレーズを使った詩は、ちょっとぎこちなくゴツゴツしているが、なんだか初々しい。本シリーズの随筆は、特にテーマは決めずにその都度思いついた内容を記しているようなのだが、ひとつのテーマから次のテーマへ、こういう連想になったのかと納得したり意表をつかれたりする。一つのエッセイの中でもセロニアス・モンクからフィリッパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』へ、そしてヴェルコール『海の沈黙』へという連想の流れ方。文学にしろ映画にしろ、幅が広くてのびのび読める。今回は、たまたまだろうが訃報にまつわる随筆がいくつかあり、しんとしたトーン。悼み方は人それぞれなのだが、故人との記憶で何が一番強く残っているかというところに、その人とのかかわり方が現れてくるかなと思った。