(ストーリー内容に詳しく言及した部分があります) 京都に住む気弱な中学生・天童純(小野賢章)は、学校帰りに怪物に襲われる。逃げ込んだ寺で僧侶・源雲(中村獅童)に助けられるが、気付くと時を越えて平安時代の古都に来ていた。源雲は純が封印した「オロチ」を操ることが出来る救いの御子だと考え、都を跋扈する「鬼」と戦う為に連れてきたのだ。何もかも腑に落ちない純だが、ふとしたことで「鬼」の少女・水葉(石原さとみ)を助けてしまう。監督は川崎博嗣、キャラクターデザインは『NARUTO』の西尾鉄也。原作は高田崇史の小説。
 スタジオぴえろ製作なのだが、ぴえろ総力戦とでも言うべき作画祭り映画。キャラクターデザインが西尾なせいか、あれNARUTO?みたいなところがあってご愛嬌だが、アクションシーン、特にクリーチャーデザインとその動きは見ごたえがある。序盤の鬼と陰陽師(?)たちの戦いでぐいっと引き込まれた。また、クライマックスで登場するオロチ本体の造形がとてもいい。「何で出来ているか」というところを最大の見せ場にしていく作画には唸った。
 しかし本作、肝心のストーリーにいまひとつ牽引力がない。原作小説がある程度のボリュームがある(未読なんですが)ところを、かいつまんで2時間に収めているからかもしれないが、何より、主人公の立て方があまり上手くいっていないなという気がした。確かにキャラとして立てるのが難しい主人公、そして物語背景ではあると思う。純はケンカは嫌いで戦いなどできれば避けたいし、そもそも自分が平安時代に連れてこられた経緯をよくわかっていない。自分からアクションを起こさせるのが難しい設定だ。加えて、都を脅かしている鬼が実は、元々住んでいた土地から追われた迫害される民であり、自分達の土地を取り戻す為に貴族たちと戦っていたと言う。純は貴族側にも鬼側にも友人といえる人たちが出来た為、どちらの側につくか悩む。おそらく、どちらかを悪者にはせず共存していくこと、純が「決めない」ことが物語のポイントになるはずだったのだと思うが、キャラクターや世界の背景の説明が足りず、純が単にグズグズしている(まあそういう面もあるんですが)ように見えてしまう。この世界を描くには色々なものが足りなかったんじゃないかなと残念。
 また、作品内ではスルーされているが、純が来た世界は、貴族が権力を握っていた世界の延長上にある。鬼の味方をして貴族を倒したら、歴史が変わって純の時代にも影響あるはずなんじゃないかと思うんだけど・・・。最後、純の時代に変化があったようには見えなかった、ということは、鬼達はやはり追われていったということじゃないかと・・・。じゃあ純たちは何の為に戦ったの?って思ってしまう。そこまでストーリー詰めてるのかどうかわからないが。