ヘニング・マンケル著、柳沢由実子訳
37歳の警官ステファン・リンドマンは、舌がんの宣告をされ手術を控えている。そんな矢先、かつて世話になった先輩警官が殺される事件が起きた。休暇中のステファンは事件の舞台となった田舎町へ向かう。スウェーデン警察小説の名手によるシリーズ、主人公が年配者のヴァランダーから、若いステファンへと交代した。主人公の個人的な問題と、事件が平行して進むのはこれまでと同じだ。ステファンの場合、交際している女性との関係にふんぎりがつかないこと、何よりがんの手術という大きな問題から逃避する為に、事件に積極的にかかわっていく向きがある。あまりほめられたことではないのだろうが、この逃避、先延ばししてしまう心境はよくわかるだけに苦笑。ステファンは事件の過程で、自分の父親の知らなかった一面を知ってしまう。これとどう接していくかが、今後も描かれていくのだろうか。事件の背景となる、ある思想問題は、ヨーロッパ圏では根深く残っているのだろうか。ステファンとある人物との会話が全くかみ合わない、すれ違い続けるところが恐ろしかった。ある人物の思想に全く揺らぎがない、己の正しさを確信しているというところが怖い。論理で説得することができないのだ。