font size="1"> 舞台となるのは主に夜なんですが・・・。恋人がパリに留学してしまったカイ(ジャック・ヤオ)は本屋に居座りフランス語の参考書を読み漁る。そんな彼に、書店員のスージー(アンバー・クォ)は好意を寄せているが、パリに行くことしか頭にないカイはさっぱり気づかない。旅行資金工面の為、カイは不動産屋で町の元締めのパオに借金し、その代りに謎の小包を運ぶことになる。しかしなぜかパオの甥ホンや、パオに目をつけていた刑事に、居合わせたスージー共々追われることになる。監督はアーヴィン・チャン。最後に、監督が師事した故エドワード・ヤンへの献辞があり泣けた。
 なぜかヴィム・ヴェンダース製作総指揮だという本作。あくまで製作総指揮なので、ヴェンダースぽさはあまり感じない。女性を連れて夜の街を逃げ回る、ジャズが頻繁に流れるというところが、和田誠監督『真夜中まで』に似ているなぁと思った。アーヴィン・チャン監督ないしは脚本家が『真夜中まで』を見ているということはないと思うが。
 カイはごくごく普通の青年。正直、キャラが薄い。これはスージーに関しても同様。演じるアンバー・クォは台湾版宮崎あおい的なかわいらしさがあるのだが、スージーがどういう女の子なのかというキャラクター造形がはっきりせずに、損しているように思った。本作で魅力的なのはむしろ脇役の面々。見るからに怪しい、しかしそれほど大物ではなさそうな顔役や、こってり系イケメンの刑事と香港映画のお約束的デブの相棒。そしてオレンジ色のユニフォームに身を包んだホンと、その仲間たち。ホンの奇矯なキャラクターが作品にアクセントをつけていた。ホンは、顔立ちは結構イケメンなのに髪型がきっちりしすぎているのと動きが微妙に気持ち悪い(笑)ので二枚目と呼ぶのに躊躇してしまう。そして、ファミリーマート(文字通り、日本のコンビニ・ファミリーマートである。台湾に出店してるのね)店員をしているカイの友人がとてもいい。ぬぼーっとした風貌で、茫洋としたいいキャラクターだった。カイの恋模様よりも、むしろ彼の片思いの行方が知りたくなるし、カイよりも彼の方を応援したくなってしまった。水餃子といい麻雀といい、彼が絡んでいるシーンは魅力的なものが多い。
 他愛のない、少女マンガ活劇とでも言いたくなるかわいらしい作品。かわいらしすぎてちょっと眠くなってしまったが・・・。もうちょっとテンポがよければなぁ。また、予告編でも使われていたダンスシーンがとてもキュートなので、前編このくらい突き抜けていてもいいのにと思った。なお、路地裏や町並みのロングショットなど、これは日本では?!とびっくりするくらい雰囲気が似ている。そういう意味では親しみやすい映画。