14歳のマティ(ヘイリー・スタインフェルド)は雇い人のトム(ジョシュ・ブローリン)殺された父の仇を取る為、凄腕だが大酒のみ保安官コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇う。賞金稼ぎのテキサスレンジャー・ラブーフ(マット・ディモン)も加わり、追跡の旅へ。監督はジョエル&イーサン・コーエン。コーエン兄弟、『シリアスマン』の次の作品がこれなのか・・・触れ幅が大きすぎる。なお本作、ジョン・ウェイン主演作『勇気ある追跡』のリメイクとなる。本作の方が原作に忠実で大分雰囲気が異なるようなので(私は『勇気~』は未見)、リメイクというよりも原作の再映画化と言った方がいいかも。
 予想以上に原作に忠実な映画だった。ジャンルとしては西部劇なのだが、いわゆる愉快な西部「活劇」ではなく、舞台が西部の荒野だという意味合いでの西部劇。景色の切り取り方、見せ方がすごくよかった。絵巻物のようにゆるゆる流れるようでいて、エピソードの割愛の仕方は結構思い切っている。たゆたうようでありつつざくざく話が進むという、時間の処理が不思議な作品だった。たゆたう、という感じは風景の荒涼とした広がりによるものもあるだろうが。終盤、コグバーンがマティを運ぶシークエンスは、どんどん神話か聖書の世界に突入していくようなスケールを感じた(おそらくキリスト教的な「幼子を運ぶ」イメージは重ねているのではないかと思う)。題名が意味するところがさらっとわかる終盤にはぐっときた。
 マティを演じたスタインフェルドが素晴らしい。本作の主役・主演は実質マティでありスタインフェルドだ。原作のイメージのマティがそのまま出てきたようだった。マティはとても気丈な、大人びた少女で大人とも互角に渡り合うのだが、時折子供っぽさが出る。少女であるが、性的なイメージが希薄で、荒くれ男達に混じっていてもあまり危うさがない。これはコーエン兄弟作品の持ち味でもあろうし(コーエン兄弟の映画の中で、色っぽい女性とめぐり合った覚えがない)、スタインフェルドの力量でもあるだろう。男女のラブストーリーへ落とし込まないよう注意されていたと思う。人としての敬意と仁義が彼らの行動の根底にある(それも愛といえば愛かもしれないけど)。また、マティと商人の会話など、マティが商人をやり込めているようなのだが、実はマティが(子供ゆえ)譲歩してもらっている部分も結構あるんじゃないかなと、なんとなく伺えるところが面白い。
 ジェフ・ブリッジスに眼帯が似合いすぎるのは置いておいて、マット・ディモンが『ヒアアフター』出演時とは別人のようで驚いた。この人、やっぱり上手かったんだなー。いわゆるなりきり・憑依タイプではなく、「このような人」に見せるテクニックに長けているという印象。クリスチャン・ベールのように徹底的な肉体改造をするわけでもないのに、現代アメリカの青年ではなくテキサスレンジャーに見える。