神林長平著
FAFとジャムとの戦いを取材してきた地球のジャーナリスト、リン・ジャクスンの元へ、ジャムと結託してFAFを乗っ取ったというロンバート大佐からの手紙が届く。それは人類に対する宣戦布告だった。ジャムとの総力戦に突入した特殊戦とFAFは、人間の認識・主観が通用しない世界に直面する。約30年にわたって執筆が続けられている、もはや著者のライフワークと化しているシリーズ3作目。著者は一貫して、人間の理解から遠く離れた存在とはどのようなものか、そういった存在とコミュニケートする(戦争もコミュニケートの一種)とはどういう状況になるのか、ということを丹念に描いている。すごく我慢強いと言うか執念深いというか・・・。妙にくどくどしい文章、構成になっているのだが、後半でそれがどういう仕掛けなのかわかってきて、なるほどと腑に落ちた。しかし七面倒くさいことやるなー(笑)。1作目から読んでいると、主人公である深井零のキャラクターが変化してきていることがわかる。本文中でもブッカーにたびたび「人間だ」と言われるのだが、人間であろうとする、人間であることを覚悟していく方向へ変わってきている。これまでは愛機・雪風と同じような存在になりたいと願い、そして雪風と自分は別のものであると思い知らされた零がこんなふうに・・・と思うと大変感慨深いものがあった。ラストの力強さは今までにないものだと思う。実は東日本大震災が起きる直前から、余震の続く中で読んでいたのが、ここ最近読んだ小説の中では、個人的には一番勇気づけられた。なぜよりによって本作なのか自分でも謎だが。