石田千
東京都内を中心に、色々な町での「平日」体験を綴った短編集。「私」は男だったり女だったり猫だったり、形が定まらない。著者の随筆よりもいくらか幻想的で浮遊感がある、白昼夢のような語り口だ。しかし、舞台となる地名は実在のもので、実在する建物、通り、お店などが登場し、これはあそこね、とニヤリ。ふらふらとお散歩、小旅行に出かけたくなる。ちょっとした遠出の、そこはかとない非日常感を味わった。小説と散文・詩の間のようなスタイルだと思う。地に足のついた部分とふわふわした部分とがまぜこぜになっていて、不思議な感じ。なお、著者がかなりののんべえであることが、それとなく窺えておかしい。