新聞会社の2代目社長ブリット(セス・ローゲン)と超有能な運転手カトー(ジェイ・チョウ)。ヒーローに憧れるブリットは、悪者のふりをして悪党に近付き、彼らををこらしめることを思いつく。2人はマスクとスーツで正体を隠し、“グリーン・ホーネット”を名乗って犯罪組織に近づいていく。一方、町を牛耳るギャングのボス・ゴドンフスキー(クリストフ・ヴァルツ)はグリーン・ホーネットに商売の邪魔をされ苛立っていた。監督はミシェル・ゴンドリー。
 原作はアメリカのテレビドラマだそうだ。私は原作を見たことはないのだが、おそらく、主人公の人となりの部分が、かなり違った味わいになっているのではないかと思う。一応ヒーローものになるのだろうが、ブリットにはヒーローらしいところが全くない。ヒーローは、例えばスパイダーマンのように普段はヘタレ男子であっても、特殊能力があったり、いざとなれば勇気を発揮したりするのが一般的だろう。少なくともヒーローである以上、どこかしら人に愛される要素を盛り込んであるものだ。しかし、ブリットにはこの愛される要素が皆無とまでは言わないけど大分不足なんですよ!
 ブリットは悪人ではないし、基本気のいい奴ではある。しかし、その気のよさを相殺する勢いのボンクラさなのだ。「ダメ男だけど可愛い」という域を軽々と超えており、あまりにデリカシーがないので彼がしゃべるたびにイラついた。単に私と相性が悪い主人公だということなのだろうが、ここまでウザいヒーローは珍しいと思う。秘書のケイス(キャメロン・ディアス)がキレるのにも、あの無神経さの前では頷くしかない。
 一方、発明マニアでケンカの腕のたつデキる男なはずのカトーも、相当ボンクラだ。色々際立った才能があるのに、何なんだろうこの残念さは・・・。2人が友情を深めていく過程もどこかいびつで、奇妙な味わいの男の子映画だった。やたらとケンカするが、その一方で自分を構ってほしくてしょうがない。友達になりたい気持ちが空回っている。お前ら、人としてどれだけコミュニケーションスキルが低いんだよ!途中から、ブリットとカトーがなんでお互いに腹立ててるのかわからなくなってきました。
 頭良くても金持ちでもボンクラはボンクラである、という今まで自作にボンクラ男主人公しか登用しなかったミシェル・ゴンドリーならではの境地だと思う。ゴンドリーは、好男子の具体的なイメージを持てないんじゃないかな~。しかしヒーローものでこれはありなのか微妙。そもそもこの人たち、正義の味方らしきこと結局やらないし、新聞社として正しいことも結局やらないよね。