クリスマスを前にして、ヴュイヤール夫妻の元に子供たちが集まってきた。今年は5年前に出入り禁止となった二男アンリ(マチュー・アマルリック)もやってくるというので、彼を追放した張本人である長女エリザベート(アンヌ・コンシニ)は気が重い。しかも母ジュノン(カトリーヌ・ドヌーヴ)は白血病に冒されており、エリザベートの息子ポールか、アンリからの骨髄移植が必要だというのだ。監督はアルノー・デプレシャン。デプレシャン作品の集大成的作品だと思う。
 クリスマス映画ではあるが、全く心温まる方向にはいかないのがデプレシャンらしい。不仲な人は不仲なままだし、むしろ人間関係がよりややこしくなる局面も。それで本当にいいの?と言いたくなる人たちもいる。しかし、大団円などなくても物語は進むのだ。
これは、不和もそれはそれとして飲み込んでしまう、家族という形の不思議にもよるものだろう。ジュノンとアンリがビニールカーテンごしに視線を合わせる。2人の間には相互理解があったようにも思えるが、お互いにうまがあわないままだろうし、許したわけでもないだろう。それでも家族は家族なのだ。家族であることと相手を好きか嫌いかということは、ほとんど関係なく成立している。  また、家族同士にしかわからない家族の関係というものがあるなと思った。エリザベートはアンリを蛇蝎のごとく嫌っている。アンリはお金にだらしなく身勝手で家族内でも厄介者扱い。対してエリザベートは完ぺき主義のきらいもある性格なので、そりが合わないのは頷ける。しかし家族から追放というのは過剰すぎるように思える。彼女がなぜそんなにアンリを嫌うのか、具体的な説明はあまりされない。また、アンリが過去に家族に対してしたことについてもそれほど説明はされない。そのほかの家族の来歴についても、多分こんなことがあったんじゃないかと推測される程度だ。それは家族の間でしかわからないとでもいうように、過去のエピソードの肝心な部分、具体的な部分は映画を見る側には明示されない。
 そんな中途半端な見せ方なのだが、各登場人物のキャラクターがしっかり立ち上がっていてとても面白い。ちょっとした言動に人柄が見え隠れする。特に印象深いのは、エリザベートの息子ポール。周囲となかなか打ち解けられない少年なのだが、やはりアウトサイダー的なアンリにはぎこちなくだが懐く。アンリの方も、ポールに対してはそれとなく気を遣っている。ポールが自分の居場所を見つけたと思われるラストには、ちょっとほっとした。全くの部外者として登場し、勝手に楽しんで勝手に去っていくアンリの恋人もユニーク。
 家族全員が音楽をたしなむという設定から、音楽が多用されている音楽映画でもある。音楽の幅はクラシックからジャズからアフリカンミュージックぽいものからクラブミュージックまでという広いもの。でもどれもその場面にしっくりきていて、監督の趣味の良さがうかがえた。