第23回東京国際映画祭にて。寄宿学校ヘールシャムで共に育った、キャシー(キャリー・マリガン)、ルース(キーラ・ナイトレイ)、トミー(アンドリュー・ガーフィールド)。キャシーとトミーの間には通じ合うものがあったが、トミーと恋人同士になったのはルースだった。18歳になった3人は学校から外の世界へ出る。しかし、彼らには一般人とは違う、特別の役割があった。カズオ・イシグロの同名小説をマーク・ロマネク監督が映画化。
 原作に対する敬意が感じられる、原作付き映画としてはかなりの良作。原作の世界の雰囲気が再現されていると思うし、脚本を変にひねらなかったところもいい。特にロケーションが素晴らしく、ヘールシャムの校舎などイメージそのもの。イギリスの田舎や海辺の風景が美しく見惚れた。
 とはいっても、原作では徐々にベールがはがれていくような語り口だったが、本作では彼らの人生に関する「秘密」はかなり早い段階ではっきり明かされているという違いはある。彼らの運命のいきつく先が最初から提示されていることで、彼らの青春はより際立ち、切なさも強まっていた。終わりが見えるので、3人の間に生じてしまう取り返しのつかなさ、一瞬の貴重さが、より身を切られるように感じられるのだ。
 語り手はキャシーなのだが、あまり美人ではないことで微妙にコンプレックスをもっており、しかしそのコンプレックスに対して自分の中で微妙にエクスキューズを作っている、ルースに対する嫉妬や怒りは直視しようとしない感じ(3人の関係が変わってしまうは、彼女のこの態度も一因だと思う)とか、身につまされ切ない。演じるマリガンが上手い。いわゆる美人ではないがキュート。キャシー役選びに難航していたところ、サンダンス映画祭で『17歳の肖像』を見たプロデューサーが、彼女だ!と確信したとか。それも納得。
 トミー役のガーフィールドもとてもいい。ルックスもキュート。『BOY A』で見た時、ずいぶん上手い子だなと思ったが、本作でもナイーブさが感じられる演技。この2人と並ぶとキーラ・ナイトレイが若干割を食った感はあるが、役柄的にもこのくらいの地味さで丁度良かったのかしら。あと、校長役でシャーロット・ランプリングが出ていてびっくり。似合っている。
 それにしても、つくづく残酷な話(というか設定)だと思う。原作も本作も、いわゆる生命倫理を問うものではなく、あくまで青春物語、恋愛物語としての側面が強いのだが、その目的の為だけに人間を生むことが正しいとは思えない(そう考えると、校長の人生がどんなものだったのかも気になってくる)。明らかになる「ギャラリー」の目的など、冗談じゃないと。