第23回東京国際映画祭にて。NYでリムジンサービスの運転手をしている、さえない中年男ジャック(フィリップ・シーモア・ホフマン)。ある日同僚のクライドの紹介で、クライドの妻ルーシーの同僚・コニーと知り合う。彼女と出会い好意を抱いたことで、ジャックの生活は変わり始める。
 フィリップ・シーモア・ホフマン初の監督・主演作品。俳優としてはもちろん名優クラスの人だが、監督としても才能ありそう。意外とオーソドックスで、奇をてらったところがない作品なのだが、却って趣味のよさを感じさせる。若干スマートすぎてイヤミといえばイヤミかもしれないけど(笑)。
 映画としてのたたずまいはスマートだが、登場人物たちは決してスマートではない。主人公であるジャックは見た目はぱっとしないし、機知に富んでいるわけでもないし、お金があるわけでもない。個人的にはどちらかというと見ているとイライラしてくるタイプの人物だ(シーモア・ホフマンが観客をイライラさせようとしているとしか思えない上手な演技で・・・)。料理が失敗してパニックになる様子など、いるわこんな人!そして自分の中にもこんな人がいるわ!といういたたまれなさに満ち溢れていて、シーモア・ホフマンの観察眼の鋭さというか意地悪さを感じた。コニーも、不美人ではないが奥手で大人しく、若干自意識過剰。やはり人によってはイライラさせられるタイプの人物だろう。彼女の「モテ慣れしてないオーラ」や余裕のなさは、身につまされすぎて正直ちょっときつかった。ものすごくやるせない気持ちになる(笑)。
 しかし、その冴えない2人が出会うことで、ちょっとづつ変化していく。ジャックは「ボートに乗りたい」というコニーの為に水泳を習い、更に彼女に作る為の料理を習う。ジャックのコニーに対する態度、彼女の為にやろうとすることは、発想があまりに少年ぽいというか、女性慣れしていなさすぎるのだが、徐々に一生懸命さが可愛く見えてくる。コニーも若干とんちんかんなのだが、だんだん好ましく見えてくるのが不思議だ。
 1組の男女がひかれあっていく過程が主軸となっている一方、夫婦として長年つきあってきたクライドとルーシーの関係は危機を迎えている。一見円満そうなのだが、お互いに浮気をしているらしく、ルーシーの気持ちは離れつつあるし、クライドはそれを上手く引き止めることができない。カップルの始まりと終わりを平行させることでバランスがとれていた(若干取り過ぎな気もしたが)と思う。