宇宙最速を競う、5年に一度のカーレース・レッドライン。八百長レースに加担して予選落ちするはずだったJP(木村拓也)は、棄権者が出た為にレッドライン決勝に出場することになった。子供の頃からレーサーを夢見ていたソノシー(蒼井優)や無敵の帝王・マシンヘッドら、手ごわいライバル達が武器満載の改造車と共に集う。しかし開催地は、軍事国家ロボワールド。レッドライン開催に反対する大統領は武力行使でレース妨害に乗り出してきた。
 監督は小池健。原作・脚本は石井克人。石井克人監督の『PARTY7』のアニメーション部分を小池が監督したことが縁となったのか。石井監督は正直言って脚本が上手いタイプではないと思っていたので、どうなることかと心配だったが、これが予想外に熱血少年マンガ的で面白い。なお脚本は石井の他、榎戸洋司、櫻井圭記が手がけている。アニメーション制作はマッドハウス。去年から今年にかけてのマッドハウス作品の充実振りは尋常でないな。
 本作は手描き動画で10万枚以上だというが、手描きだからすごいというより、カーアクションの見せ方として新しい、かっこいいと思う部分が大きかった。特に加速に伴って重力がぐーっと掛かっていく感じがしっかり出ていていい。単純にアクションアニメとしても見ごたえがある。均一でない線の太さや、極端なフォルムのデフォルメ、漫画で言う所のベタのような極端な陰影など、絵が意外に太いというか、ダイナミズムがある。カーレースだがノリはスーパーロボットものっぽい荒唐無稽さ、なんでもOKな大らかさが好ましい。
 本作、予告編などではスタイリッシュなアニメとしてのアピール、アニメファン以外の人にも見て欲しいという意欲(その為のこのキャスティングだろうし)が感じられたが、実際のところ、ある程度アニメーションを見ている人、動画に快感を感じる人の方が本作を気に入るだろう。ストーリー重視の人にはちょっとアピール力弱い(お話の組み立ては大雑把なので)のではないだろうか。もし「キムタク主演なんでしょ~?」みたいな理由でアニメファンに敬遠されているとしたら勿体無い。もちろん普段アニメーションを見ない人にも観て欲しいのだが、ある程度素養がある方がより楽しめる類の作品であるとは思う。
 主人公のJPが一見リーゼントの不良風なのだが、根が由緒正しい「男子」でキャラクターとして非常にかわいい。通り名では揶揄をこめて「やさしい」と称されるのだが、実のところ本当に優しいというところが、逆に新鮮だった。こういうタイプの主人公は最近案外見なかった気がする。演じる木村拓也も予想外に好演。彼は声優業だと結構いい演技をすると思う。声のみだと、キムタクというキャラが薄くなってニュートラルに男の子っぽさが出るのがいいのかもしれない。その他声優については、ソノシー役の蒼井優がびっくりするくらい上手い。声の演技が声優の演技なんだよな~。『鉄コン筋クリート』でも思ったけど、蒼井優おそるべしです。