ルイ・マル監督、25歳の時のデビュー作。デビューでこのクオリティか・・・。撮影のアンリ・ドカエも新人だったというから恐ろしい。原作はノエル・カレフの小説。音楽がマイルス・デイビスというのも有名。
 元軍人で今は技師として勤めているジュリアン・タベルニエ(モーリス・ロネ)は、勤務先の社長夫人フロランス・カララ(ジャンヌ・モロー)と不倫中。2人で共謀して社長を会社で殺害しようとするが、ジュリアンがエレベーターに閉じ込められてしまったことで思わぬ展開に。
 モノクロの画面が美しい。ジャンヌ・モローは決してスタンダードな美人顔ではないのだが、モノクロには映える。ルイ・マルがこの人は美人なんだぞーっと念じて撮っている感じがするからかもしれないけど(笑)。彼女が夜の町をさまよう様は危なっかしく見える。ホテルに入ろうとして断れているらしいシーンがあるのだが、当時のパリでは女性1人ではホテルに泊まれなかったのか?それとも何か特殊な事情があるの?他の客よりも妙に身なりがいい(社長夫人だからね)というのもあるのだろうが、酒場に入ると奇異の目で見られたりして、女性が一人で夜遊び、というのがあまり一般的な時代ではなかった様子が窺える。
 完全犯罪を巡るサスペンスなのだが、思っていたよりも本格ミステリ的。犯人が主人公なので、観客にはどのように犯行が行われたか、どのへんで計画が狂ってきておそらくこれが伏線になるんだな、という設計は大体わかるのだが、その設計が案外かっちりしていた。特に若いカップルのエピソードとの繋ぎ方はきれい。カメラの伏線、途中まではこうくるんだろうなと思ったけど、最後にそうくるかと。浮気するならこういうところに気をつけろ!というお手本のようだな・・・。
 エレベーターの中に閉じ込められるというシチュエーションも怖いのだが、ジュリアンとフロランスが双方連絡がとれず、お互いの本意を取り違えてしまうというところがすごく怖かった。彼らの把握していないところで事がどんどん(色々な誤解に基づき)動いていってしまう過程には、いやーな焦りを感じる。
 ところで本作、若いカップルの描き方にどうも悪意があるように思った。いくらなんでも頭が悪すぎるだろうそれは・・・、と言いたくなる様な言動が続き、辟易とする。