映画プロデューサーのベン(ロバート・デ・ニーロ)はハリウッドではそこそこ成功した、そこそこ有名な存在。ショーン・ペン(ショーン・ペン)主演映画の試写にプロデューサーとして立ち会ったが、犬が無残に殺される展開が大ひんしゅくをかい、配給会社の社長(キャサリン・キーナー)からは結末を変えろと要求される。監督を説得しようとするが頑として受け入れず大弱り。一方、撮影中の映画に主演しているブルース・ウィリス(ブルース・ウィリス)はヒゲを剃らずにエージェント(ジョン・タトゥーロ)を困らせていた。板ばさみになったベンの苦労は耐えない。監督はバリー・レヴィンソン。
 デ・ニーロが普通に俳優業やっているのを久しぶりに見た気がする。最近はそれこそプロデューサーや監督としての仕事の方が目立っていたように思う。本作でのベンのような苦労をデ・ニーロもしてきたのかしら、それともプロデューサーやエージェントを困らせる側だったのかしら・・・。
 映画業界の内幕もの映画はそこそこ数があるが、本作はキャストが妙に豪華で感心した。ゲスト的にペンとウィリスが本人役で出ているのはもちろん(ウィリスはともかくペンは意外だ!これもデ・ニーロの人徳か)、別れた妻がロビン・ライト・ペンだったり、配給会社社長がキーナーだったり、エージェントがタトゥーロだったりと、わりと渋くて芸達者な面子が揃っている。しかし、その割に映画は小粒。キャストだけならハリウッド大作並なのに拍子抜けだ。俳優はそれぞれ役柄にハマってはいるが、特に冴えているというわけでもなく、こんな役柄前にもどこかで見たなと思ってしまった。
 映画プロデューサーという華やかなイメージの職業ではあるが、ベンがやっていることは、やや水もの感が強いにしろごくごく普通に「お仕事」。資金集めに四苦八苦し、わがままなクライアントに振り回され、ばらばらになりそうな現場を統制し、成功した同業者に嫉妬する。そしてプライベートでは別れた妻に未練たらたら、前々妻との間の娘との距離も離れつつある。決してかっこよくはない。まあ普通の初老サラリーマンよりはちょっとモテているかもしれないが(笑)、そううらやましい人生でもないのだ。元妻への未練など、むしろみっともないくらい。
 このあたりの描写にもっとペーソスがあるとか、ひねりがあるとかだったらもっと味わい深いドラマになったのかもしれないが、ちょっと月並みだったかなと思う。映画プロデューサー業を目新しい舞台装置ではなく、あくまで一つのお仕事として描くのなら、ベンという人物の人となりや心情について、もうちょっと細やかな演出が欲しかった。たとえばハリウッド内幕もの映画としては、最近ではウッディ・アレンの『さよなら、さよならハリウッド』があったが、あれはアレンの個性はもちろん、会話の掛け合いやストーリーそのものが面白かったんだと思う。本作はいまひとつ個性に乏しい。
 といっても、クスリと笑えるところはある。ウィリスにヒゲを剃れと言わなくちゃいけないのにあれやこれやの理由をつけて後回しにするエージェントには不本意ながら共感するし、ベンと元妻が受ける「元夫婦の為の」カウンセリングは本当にこんななのかどうかわからないがアホらしい。離婚してからも一緒にカウンセリング受けないとならないなんて面倒くさいなー。あとペンはともかく、本人役ウィリスは要求されているものをよくわかってんなー、と思った。こういう役をやっても何ら他の仕事に影響ないという、いわば上がり状態ではあるのでしょうが。