コンゴ民主共和国の首都キンシャサ。、“スタッフ・ベンダ・ビリリ”は、リーダーであるリッキーを筆頭に、ホームレスやストリートチルドレンらによって結成されたバンドだ。2004年、彼らと知り合ったフランス人映像作家のルノーとフローラニは、彼らのアルバムとドキュメンタリーを作ろうとする。しかし様々な事情によりレコーディングは中断され、なかなか完成しない。2009年にハルバムが発売されるまでの数年がかりとなったレコーディングと、ワールドツアーを追ったドキュメンタリー。
 バンドのメンバーの多くはポリオで半身不随になっており車椅子(自転車を改造したもので、手でペダルをこぐような感じ)生活。そんな彼らが「子供にポリオのワクチンをうってくれ」と歌うのでやたらと説得力がある。この歌に限ったことではなく、寝床となるダンボールの歌や、子供たちにギャングにはなるなよと呼びかける歌等、彼らの歌の歌詞は自分達の生活に根ざしたものだ。そういう歌詞の背景となっているコンゴの社会問題やホームレスの生活をもっと前面に出すことも出来ただろうが、本作はあくまで音楽映画、音楽に相対する人たちの映画として作られているところが潔い。社会背景をもうちょっと知りたいなと思うところはあったが、それは見た人各自でお勉強してね、ということだろう。
 彼らの音楽はコンゴの大衆音楽がベースとなっているそうだが、とてもダンサブルで力強い。路上生活を歌った歌詞であっても音が軽快なので愚痴っぽくなく、カラっとしている。とにかく踊れる音楽という感じで、ラブソングの中には、JBへのオマージュが込められているらしきものも。音楽そのものも力強いが、バンドメンバーの音楽で生きていく、人生を変えるという情熱の強さを感じた。リーダーであるリッキーが、バンドのマネージメントをかなり考えているらしいところ、自分に何かあったときもバンドが立ち行くようにと考えているらしいところが印象に残った。
 優れた音楽映画には魔法のような瞬間があるが(もちろん普通の映画にも魔法のような瞬間はあるが、音楽映画のそれはより強烈だと思う)、本作では、スタッフ・ベンダ・ビリリ初の海外公演、フランスの野外フェスでのステージが強烈だった。バンドメンバーにロジェというサトンゲ(一弦ギター)奏者の少年がいるのだが、彼がステージの上で化ける。彼は13歳でバンドに加わり、一度実家に帰って再度加入しているので、心身も演奏技術も成長しているのが自然ではある。ただ、このステージの上ではそれを上回る、これを表現したい、こういう表現がしたいという情熱が一気に爆発したようなパフォーマンスを見せている。自分の音楽を見つけた瞬間だったのではないかと思い、鳥肌が立った。
 彼らは現在もワールドツアー中で、日本にもやってくるそうだ。公演が成功することを願う。