舞城王太郎著
西暁町で、14歳の状態で雌馬から生まれた成雄。人間としての生活に慣れてきたころ、蛇に乗った少女・楡と出合う。そして町内では奇妙な連続殺人事件が起きていた。講談社ノベルズから出ているということで、ミステリ寄りの作品。でもミステリとしての構造はそんなに強くなく(相変わらずすっとんだトリックだけどわりと大味)、ハードカバーで出していたような少年少女の成長ものとしての側面が強い。ただ、今までは愛だろ愛!という感じだったが、今回は少年が自分の中の衝動に耳を傾けていく(彼が森の中にひかれていくのもそうか)。「考えろ」というフレーズが多用されているが、考えてもそんなに事態が好転せず衝動的にやったことの方が事態を動かすことになっているような(笑)。争いを選ぶ方向の物語は著者の作品の中では初めてなように思う。