平井玄著
新宿で生まれ育った著者が、自分の青春時代を交えつつ、1960~70年代の文化史を映画、文学、ジャズを中心に考察する。日本の文化史ではあるが、サブタイトルにもあるように、あくまで新宿のごく限られた地域を中心に語られているところが、新宿に親しむ身としては面白かった。街を通して日本が見えてくる。特に著者は新宿で商売(洗濯屋の息子だそうです)している家で育ったからか、視線が(経済的にはあまり豊かではない)暮らしに根ざした、底辺からのもので、生活感と一体であるように思った。著者は新宿高校の出身だが、余所から通ってくる学生の立ち位置とはやはり少し違っていたようだ。「愛と憎しみの新宿」という題名は大げさだがこの街に暮らしてきた人だからこそ、説得力を持って付けられる題名であると思う。著者の語り口も少々くどいが、当時の熱気が伝わるし、あの時代を語るにはふさわしいかもしれない。新宿好きならずともお勧め。映画好きとしては、冒頭にとりあげられていたゴダールがフックになったし、若松孝二の作品がいかに衝撃的だったか、ようやくぼんやりとわかった。