デニス・ジョンソン著、藤井光訳
元アメリカ軍大佐フランシス・サンズとその甥でCIAのウィリアム・サンズを中心に、アメリカ人ベトナム人ともにベトナム戦争の波に飲み込まれていく群像劇。登場人物が大勢いて、偽名をそれぞれが使うこともあるので、わざと混沌とさせていくような構成とも相まって、読んでいて混乱しそうになった。人物一覧表が欲しかったなー。戦況は混迷していき、敵地へ潜入するスパイたちでなくても、自分がどちらの側にいるのか、敵ははたして誰なのかが曖昧になっていくように見えるし、そもそも真の敵は誰なのかなどどうでもいいようにも思えてくる。サンズ元大佐は徐々に誇大妄想にとりつかれたかのようにふるまい、「赦される」ことについて語るがそれはうすっぺらく響く。全般的に、この人たち何やってるんだろうというむなしさがぬぐえない。戦争という行為のむなしさはもちろんなのだが、それぞれの人物が自分がやっていることに確信がもてない、ないしは妄想めいた確信を持ち過ぎているからか。特にサンズは最後までなにやろうとしてるのかわからなかった・・・。群像劇というと、個々の人々の姿がリンクし合い、徐々に全体像が見えてくるパターンが多いが、本作は多くの部分が断片的にしかわからない。全体の流れが見えないので不安だが、それはほとんどの登場人物が感じる不安さでもあるのだろう。