クレメンス・マイヤー著、杵淵博樹訳
主に旧東ドイツを舞台とした短編集。著者は東ドイツ出身で、デビュー作は「東ドイツ版トレインスポッティング」と称されたそうだ。本作を読むと、それもなんとなく納得できる。登場する人々はいわゆる「負け組」で社会の底辺にいる、今後もそこから這い上がってくる見込みが薄い人たちだ。悲哀がにじみすぎて、読んでいてわが身に置き換え鬱々としてきた。共感したくないところばかり共感できる・・・。希望がわずかに見えたかと思うとまた突き落とされるような、「犬の馬のこと」のラストなどどんな駄目押しかと。ただ、底辺の人生にも美しい瞬間や喜びは当然ある。美しさと悲しみがないまぜになった「おれたちは旅する」「通路にて」が良い。文体はあっさりとしていてそっけないが、対象に対する著者の共感が深く、突き放しきった感じはしない。読んでいて物悲しいけど親しみが湧いた。