片桐はいり
もともと女優としての著者は好きだったのだが、『わたしのマトカ』『グアテマラの弟』という2冊のエッセイで、文筆家としてもぐぐっと好きになった。そんな著者の新作は、『キネマ旬報』で連載されていた映画エッセイ。著者は学生時代、銀座の映画館(今のシネスイッチ銀座。当時はまだミニシアターではなかった)でもぎりのバイトをしていたそうだ。その頃の体験や近年のシネコンや地方の独自色強い映画館など、映画館と映画にまつわエッセイだというから、映画好きにはうれしい。映画だけでなく映画館(むしろこっちか)に対する著者の愛情、思い入れが嫌味なく伝わってくる。いきあたりばったりで旅に出て、旅先で映画館を探すなんて、素敵だ!あの存在感で既に有名人なのに立川のシネコンでもぎりやってた(当時何かの記事で読んだ覚えがあるが)なんて、素敵だ!著者の人柄の良さと映画館への愛が窺える好作。独立系映画館も、シネコンも、地方の劇場も、等しく愛するおおらかさがいい。