ボストン・テラン著、田口俊樹訳
第二次大戦後のボストン。耳が聞こえない少女イヴは、暴力的な父親と父親に逆らえない母親の元に生まれた。彼女と母親に手を差し伸べたのは、ドイツからの移民である女性フラン。イヴは写真の才能を発揮し成長していくが、麻薬に溺れた父親の暴力は増していく。著者は戦う男たち、何かの衝動に駆られ破滅へと向かっていく男たちを描いてきたという印象があるが、主人公が女性だと、同じ戦うということにしてもがらりと趣が異なる。彼女らは好んで戦うのではなく、戦わざるをえないから戦う。また、これまでの作品の主人公であった男性たちには、彼らを愛し支える女性たちがいたが、本作の女性たちは女性同士で連帯し、男性、ないしは男性が作ったものと戦う。これは物語の舞台が現代ではなく'50~'60年代だからという時代の違いもあるからだろうが、愛し合っても共闘できない感がドライだ。大変面白く女性たちは力強い。しかし一方で、肉体的・精神的に体に染み付いた暴力に対する恐怖に勝てない無力感が生々しくて、読んでいてぐったりするところも。基本的には目には目を思想の作家なのかなとは思う。暴力憎悪イコール暴力否定ではないのね。最後はちょっとヒロイックすぎるきらいもあるが、いい小説。