ブエノスアイレスで最も古いレコーディングスタジオで、アルバム「CAFE DE LOS MAESTROS」の収録の為、1940~50年代に活躍した、アルゼンチンタンゴ黄金期を築いたスターたちが一同に会した。レコーディング風景や彼らの回想から、アルバムリリース記念のコロン劇場でのコンサートまで追う、音楽ドキュメンタリー。監督はミゲル・コアン。
 アルゼンチン版「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とでも言おうか。私はアルゼンチンタンゴに詳しくはない(聞くのは好きだけど)ので、登場するマエストロたちのことは殆ど知らない。でも皆さんいい顔をしており、自分の演奏やアルゼンチンタンゴについて語る時には、本当に音楽が好きなんだなぁ!と実感できる。特に、子供の頃にバンドネオンに魅せられ、父親が無理して買ってくれたという話をしたマエストロが、そのバンドネオンを抱えて微笑む姿は素敵だった。
 タンゴの知識がないと、インタビュー主体の前半はちょっと入り辛いかもしれない。私はうっかり眠くなってしまった。少しでも予習してから見に行けばよかったなと少し後悔した。逆に、アルゼンチンタンゴについて造形が深い人にとっては、かなり興味深く、貴重な作品なのでは。おそらく記録映画としても撮られた作品だと思う(カットになっただろう部分が多々あることが予想されるので、完全版だとどんな感じになるのか気になる)。出演している方の中には、既に亡くなっている(本作は2006年に撮影された)方もいらっしゃる。
 後半のコンサートの映像は圧巻で、一気に目がさめた。ピアニストを、手元が見えるように後ろから撮っているところなど、わかっている感がある。オーケストラ編成なのだが指揮者がおらず、ピアノの人が時々指示出している程度なのが面白い。あれで演奏あわせられるのか・・・。コンサート部分をもうちょっと堪能したかったが、それはアルバムを聞いてねということだろう。アルゼンチンタンゴは、体の芯の部分がぶるっと震えるような、何と言うか、肉体に訴えかけてくるものがありますね(笑)。基本踊るための音楽だからか。