パリ20区の公立中学校で国語教師をしているフランソワ(フランソワ・ベゴドー)。担任している24人の生徒たちは意欲が薄かったり反抗的だったりで問題が耐えない。生徒に翻弄されつつ授業を進めようとするフランソワだが。監督はローラン・カンテ。
 題名にある「僕たちのクラス」という言葉から連想されるほどには、クラスにまとまりがあるわけではない。生徒達の間では、個々に仲がいい子がいても全体的な結束は薄いし、教師との間の信頼関係もあるとは言えない。むしろ学校に対する不信感や反感を隠さない。教師と生徒の絆どころか、教師がいかに生徒と戦っているかという苦労が切々と伝わってくる(笑)。私は中高生のころ、「そりゃーこんなクソガキ数十人相手にしてたら先生だって嫌になるよねー、ちったぁ協力してあげないとねー」と思っている、まあ嫌なお子さんだったのだが(笑)、そんな気持ちを思い出した。
 フランソワは時々ヒートアップしすぎなきらいはあるが、基本的に熱心な、そこそこいい教師ではあると思う。ただ、生じる問題の量は熱意でカバーできる範囲を越えている。学級崩壊加減は日本とどっこいどっこい。反抗的な生徒に対してはまだ対応のしようがあるが、やる気がない、勉強の意義を実感できない生徒に対してはなす術がない(最後の女子生徒の言葉はきつい。返す言葉がみつからない)。そりゃあキレたくもなるよなぁと同情してしまう。また、フランスのお国柄なのか、生徒たちの自己主張が激しく口が達者。やる気はないなりになぜやる気がないのか、教師の言っていることはおかしいんじゃないのかとがんがん突っ込みを入れてくる。これにいちいち対応しなくてはならないなんて気が遠くなりそう。ただ、生徒に対する罰則が結構シビアだったり、教師による生徒の評価会に生徒代表が出席していたりと、子供の扱いについての日本との差異が見られて面白い。
 今のパリの公立校の雰囲気が垣間見えて興味深い。教室の子供たちは出身国、民族が様々で、パリは多民族都市だということを改めて感じた。移民の子供が多いようで、白人生徒の方が少ない。国語の例文に出てくる男性の名前が「なんで白人の名前ばかりなんだ!」と突っ込みを受けたりする。多民族ということは、こういうところまで配慮しなくてはならないということなのか。また、親がフランス語をしゃべれないという生徒もおり、保護者面談で子供が通訳したりもする。やり辛いだろうなぁ。教師は白人が多いというところで、また生徒との間にギャップが生じているようにも思った。
 ドキュメンタリータッチで撮影された作品だが、生徒達のキャスティングは、役柄の背景に近い背景を持った役者を選んだそうだ。生徒間のパワーバランスやそれぞれの立ち居地が自然に演じられていて、かなりの期間指導、ワークショップを重ねたのではないだろうか。